「使命の達成。つまり、この開いた異界への門を以て原初の神を顕現させること。貴方は、そのためにずっと生きてきた」
 太の言葉に日井はニヤリと笑った。
「思えば、幸運がいくつも重なった。菅原市の生野なる人物が『真統記』を持っていることを掴んではいたものの、あやしの王に迂闊に手を出すわけにもいかず、目先の利益に目が眩んだ妖共をけしかけつつ手駒としていた天狗、豊前翁に彼を探らせて機会を窺うだけ。だがそこに幸運にも君達が現れ、そしてたまきが現れた。くく、何という偶然か。いいや、これは祖先の加護というやつか、あるいは、天津神々の思し召し、か」
 日井は太を人質に取る。その首筋に刃が付きつけられる。
「太君!」
「望月殿、どうか動かれませぬよう。なに、そのまま皆じっとしていれば全ては万事上手くいく」
「たまきを唆したのは貴方ですか」
「唆したとは、随分と人聞きが悪い。私は彼女に大江御前が『真統記』を持っていることを伝えただけだ」
「貴方分かってるの? ヒノコの顕現なんてしたら、この国は只じゃすまないのに」
 そう言って望月はハッとする。
「……貴方の目的って」
「何故そう邪推してくれる。だがまあ、大方君の察する通りだろうよ」
「どうしたんですか? 望月さん」
 弓納は日井の事に気を払いながらも、振り返って望月に尋ねた。

「使命の達成。つまり、この開いた異界への門を以て原初の神を顕現させること。貴方は、そのためにずっと生きてきた」
 太の言葉に日井はニヤリと笑った。
「思えば、幸運がいくつも重なった。菅原市の生野なる人物が『真統記』を持っていることを掴んではいたものの、あやしの王に迂闊に手を出すわけにもいかず、目先の利益に目が眩んだ妖共をけしかけつつ手駒としていた天狗、豊前翁に彼を探らせて機会を窺うだけ。だがそこに幸運にも君達が現れ、そしてたまきが現れた。くく、何という偶然か。いいや、これは祖先の加護というやつか、あるいは、天津神々の思し召し、か」
 日井は太を人質に取る。その首筋に刃が付きつけられる。
「太君!」
「望月殿、どうか動かれませぬよう。なに、そのまま皆じっとしていれば全ては万事上手くいく」
「たまきを唆したのは貴方ですか」
「唆したとは、随分と人聞きが悪い。私は彼女に大江御前が『真統記』を持っていることを伝えただけだ」
「貴方分かってるの? ヒノコの顕現なんてしたら、この国は只じゃすまないのに」
 そう言って望月はハッとする。
「……貴方の目的って」
「何故そう邪推してくれる。だがまあ、大方君の察する通りだろうよ」
「どうしたんですか? 望月さん」
 弓納は日井の事に気を払いながらも、振り返って望月に尋ねた。

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