「やあああああっ!」
「ぐっ!」
 槍が振り下ろされるが、豊前翁は眉間に皺を寄せながら持っていた扇で間一髪、弓納を後方へ吹き飛ばした。弓納は数メートル後方で踏みとどまりはしたものの、その場で崩れ落ち、膝を着く。
「いっつ……」
 弓納は腹を抱えて呻く。
「全くもって背筋が凍る気分だ。数日は昏睡させるつもりでやった筈なのだが」
 弓納は槍を支えにしてよろよろと立ち上がる。その表情は少し険しかったが、瞳の奥に宿る火は消えていなかった。
「まだ、いけます」
「まだ来るか。まあいいとも、君が敗北を認めるまで何度でも遊んでやるさ。だが、自分の限界を自覚したまえよ? でないとあっという間に亡者の仲間入りだ」
「忠告ありがとうございます。でも、余計なお世話です」
「そうか、それは悪かった」
 弓納は一直線めがけて豊前翁に突っ込む。豊前翁は扇によって風を起こすのを諦め、その骨の部分を使って弓納に応戦を始める。

「やあああああっ!」
「ぐっ!」
 槍が振り下ろされるが、豊前翁は眉間に皺を寄せながら持っていた扇で間一髪、弓納を後方へ吹き飛ばした。弓納は数メートル後方で踏みとどまりはしたものの、その場で崩れ落ち、膝を着く。
「いっつ……」
 弓納は腹を抱えて呻く。
「全くもって背筋が凍る気分だ。数日は昏睡させるつもりでやった筈なのだが」
 弓納は槍を支えにしてよろよろと立ち上がる。その表情は少し険しかったが、瞳の奥に宿る火は消えていなかった。
「まだ、いけます」
「まだ来るか。まあいいとも、君が敗北を認めるまで何度でも遊んでやるさ。だが、自分の限界を自覚したまえよ? でないとあっという間に亡者の仲間入りだ」
「忠告ありがとうございます。でも、余計なお世話です」
「そうか、それは悪かった」
 弓納は一直線めがけて豊前翁に突っ込む。豊前翁は扇によって風を起こすのを諦め、その骨の部分を使って弓納に応戦を始める。

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