「結。おい、大丈夫か?」
 見知らぬ男が心配そうにして駆け寄ってくる。ここは、何処かの公園だろうか? よくは分からないが、太は夢を見ているのだと、すぐに悟った。そして自分は今、結とよばれた少女の中に入っている。
「へーきよこれくらい」
 少女は強気に返答するが、その目は泪で滲んでいた。
「平気なもんか。泣いてるじゃねえか」
「泣いてないもん」
「全く、気丈なお姫様だ」
 男はそう言いつつ少女を背負い、ゆっくりと歩き出す。
「だから、へーきだって」
「無理すんな。足擦りむいてんだ。大人しく背負われろよ」
「む、ありがとうなんて言わないわ」
 少女はそっぽを向いてしまった。しかし、彼女の嬉しい気持ちは痛いほど伝わってきた。本当は"ありがとう"と伝えたいのに、プライドが邪魔をして伝えられない。すごくもどかしい。
「素直じゃねえなあ。全く、誰に似ちまったんだ」
「そんなの、お父さんに決まってるでしょ」
 ぐずりながら、少女は男に訴えた。
「いやあ、俺はそんなに捻くれてないさ」
「捻くれてますよ~だ」
 少女はべーと舌を出す。
「こいつ、言ってくれるじゃねえか」
「ねえ、お父さん」
「なんだ?」
「何かお話を聞かせてほしい」
「ふ、お前もまだ子供だな」
「いいから、聞かせて!」
「はいはい、お姫様の頼みとあっちゃ断れねえな。そうだな、あれにしよう」
 そう言って、男は一つ一つを思い出すように少女に語り始めた。

「結。おい、大丈夫か?」
 見知らぬ男が心配そうにして駆け寄ってくる。ここは、何処かの公園だろうか? よくは分からないが、太は夢を見ているのだと、すぐに悟った。そして自分は今、結とよばれた少女の中に入っている。
「へーきよこれくらい」
 少女は強気に返答するが、その目は泪で滲んでいた。
「平気なもんか。泣いてるじゃねえか」
「泣いてないもん」
「全く、気丈なお姫様だ」
 男はそう言いつつ少女を背負い、ゆっくりと歩き出す。
「だから、へーきだって」
「無理すんな。足擦りむいてんだ。大人しく背負われろよ」
「む、ありがとうなんて言わないわ」
 少女はそっぽを向いてしまった。しかし、彼女の嬉しい気持ちは痛いほど伝わってきた。本当は"ありがとう"と伝えたいのに、プライドが邪魔をして伝えられない。すごくもどかしい。
「素直じゃねえなあ。全く、誰に似ちまったんだ」
「そんなの、お父さんに決まってるでしょ」
 ぐずりながら、少女は男に訴えた。
「いやあ、俺はそんなに捻くれてないさ」
「捻くれてますよ~だ」
 少女はべーと舌を出す。
「こいつ、言ってくれるじゃねえか」
「ねえ、お父さん」
「なんだ?」
「何かお話を聞かせてほしい」
「ふ、お前もまだ子供だな」
「いいから、聞かせて!」
「はいはい、お姫様の頼みとあっちゃ断れねえな。そうだな、あれにしよう」
 そう言って、男は一つ一つを思い出すように少女に語り始めた。

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