「騎士は手紙が湿っていることに気付きました。きっと、オリヴィアは泪を流しながら書いていたのでしょう。騎士はその手紙を抱きしめ、いつまでもオリヴィアの名前を呼び続けるのでした……」
 男は少女の方を振り向く。
「どうだ、あ、いって」
 少女は男の頬を思い切りつねる。
「なんでそんな悲しいお話をするの」
「仕方ないだろ。話のストックがなかったんだから」
「別れて終わりだなんて、嫌だ」
「お話はみんなハッピーエンドとは限らないからな」
「お父さん」
「ん、何だ」
「私はいなくならないわ」
「あ、ああ。勝手にいなくならないでくれよ」
「うん。ありがとう、お父さん」
 誰かの記憶、それとも只の夢? 少女の気持ちが伝わってくる。可能ならば、いつまでもこうしていたい。失いたくないもの。

「騎士は手紙が湿っていることに気付きました。きっと、オリヴィアは泪を流しながら書いていたのでしょう。騎士はその手紙を抱きしめ、いつまでもオリヴィアの名前を呼び続けるのでした……」
 男は少女の方を振り向く。
「どうだ、あ、いって」
 少女は男の頬を思い切りつねる。
「なんでそんな悲しいお話をするの」
「仕方ないだろ。話のストックがなかったんだから」
「分かれて終わりだなんて、嫌だ」
「お話はみんなハッピーエンドとは限らないからな」
「お父さん」
「ん、何だ」
「私はいなくならないわ」
「あ、ああ。勝手にいなくならないでくれよ」
「うん。ありがとう、お父さん」
 誰かの記憶、それとも只の夢? 少女の気持ちが伝わってくる。可能ならば、いつまでもこうしていたい。失いたくないもの。

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