その場にある筈のない声がした。男の声がした方向である入口を全員が一斉に見やると、そこには坂上は呑気そうな顔をして三人を見下ろしていた。
「坂上さん?」
「やあ姉ちゃん、ご機嫌よう」
「ええ、ごきげんよう。じゃなくって何でここにいるの!?」
 望月は思わず狼狽えるが、坂上はさも当たり前のように部屋に入ってきて席に着いた。そして何食わぬ顔で弓納にお茶を要求する。
「あの、えっと~」
「まあ細かい事は気にするなよ、嬢ちゃん」
「望月、知り合いか」
 困惑した顔で天野が望月に尋ねると、ああ、と思い出したように坂上が顔を上げた。
「そういや自己紹介がまだだったな。俺は坂上だ。刑事をやってる。よろしくな、天野さん」
「ああ、これはどうも丁寧に」
「じゃないわよ」
 望月は天野の頭をはたく。
「坂上さん。何の御用かしら。私達、特に法に触れるようなことはしていない筈ですが」
 つい先日住居侵入したところじゃねえか、と天野は思ったが、まるでその考えを見透かされていたかのように肘で小突かれてしまった。
「別にあんた達が犯罪を犯したから捕まえにきたわけじゃないさ。面白い話があるから土産に持ってきただけだ」
「面白い話?」
 望月は眉をひそめる。
「ああ、黒髪の美少女と菅原市の外れにある竹林であったって話だ」
「はあ。そりゃあ黒髪の美少女が竹林にいても別に――」
「結ちゃんと会ったって言いたいの?」
 望月が坂上に言った。
「おっ察しがいいねえ」
「貴方、まだそんな事を言ってるの。いい加減そんな妄想をやめないと日常生活に支障を」
「妄想じゃねえよ。いたってマジだ」
「いいじゃないか望月。俺もこのおっさんの話に興味がある」
「いいね。話が分かるおっさんは好きだぜ。まあ、とりあえず聞いてくれ。何、ほんの十数分くらいで終わる話だ」

 その場にある筈のない声がした。男の声がした方向である入口を全員が一斉に見やると、そこには坂上は呑気そうな顔をして三人を見下ろしていた。
「坂上さん?」
「やあ姉ちゃん、ご機嫌よう」
「ええ、ごきげんよう。じゃなくって何でここにいるの!?」
 望月は思わず狼狽えるが、坂上はさも当たり前のように部屋に入ってきて席に着いた。そして何食わぬ顔で弓納にお茶を要求する。
「あの、えっと~」
「まあ細かい事は気にするなよ、嬢ちゃん」
「望月、知り合いか」
 困惑した顔で天野が望月に尋ねると、ああ、と思い出したように坂上が顔を上げた。
「そういや自己紹介がまだだったな。俺は坂上だ。刑事をやってる。よろしくな、天野さん」
「ああ、これはどうも丁寧に」
「じゃないわよ」
 望月は天野の頭をはたく。
「坂上さん。何の御用かしら。私達、特に法に触れるようなことはしていない筈ですが」
 つい先日住居侵入したところじゃねえか、と天野は思ったが、まるでその考えを見透かされていたかのように肘で小突かれてしまった。
「別にあんた達が犯罪を犯したから捕まえにきたわけじゃないさ。面白い話があるから土産に持ってきただけだ」
「面白い話?」
 望月は眉をひそめる。
「ああ、黒髪の美少女と菅原市の外れにある竹林であったって話だ」
「はあ。そりゃあ黒髪の美少女が竹林にいても別に――」
「結ちゃんと会ったって言いたいの?」
 望月が坂上に言った。
「おっ察しがいいねえ」
「貴方、まだそんな事を言ってるの。いい加減そんな妄想をやめないと日常生活に支障を」
「妄想じゃねえよ。いたってマジだ」
「いいじゃないか望月。俺もこのおっさんの話に興味がある」
「いいね。話が分かるおっさんは好きだぜ。まあ、とりあえず聞いてくれ。何、ほんの十数分くらいで終わる話だ」