広場の中心、そこでたまきは二人を待ち構えていた。少女はブラウスの裾を持ち上げてゆっくりとお辞儀をした。望月は銃口をたまきに向ける。
「太君はどこ?」
「望月、嬢ちゃんの後ろに」
 天野に言われて、望月は奥の方を見やった。高舞台の前、見慣れぬ字で描かれた陣の中心には太が仰向けに倒れていた。陣は蒼い光を放っており、周りを薄く照らしている。
「太君!」
「大丈夫よ、祭宮さん。貴方も知ってるでしょう? 儀式は生贄を捧げるものじゃなくて、あくまで『真統記』の中身を開き、その力を引き出すもの。はじめには何も害はない。門を開け終わったら大人しく返してあげるから、そこでお行儀よくしていて頂戴」
「門って、一体、何をするつもり」
「決まってるじゃない。異界に行ってしまった私の同胞をこの地に呼び戻すの」
「異界ですって!? 貴方、何をするつもりか分かってるの?」
「勿論よ。人ならざる者の住む世界、打ち捨てられた神の住む世界。そこに、私のいなくなった同胞がいるの。だから呼び戻すのよ、これを使って」
 たまきは首から下げていたペンダントの、雫のような玉を手に取って見せた。
「……それが、『真統記』というわけね?」
「そうよ。名前だけ聞くと本か、巻物の形を想像するでしょうけど、それは大きな間違い。『真統記』は言わば巨大な図書館。そして、これはそれにアクセスするための端末。でも端末は時代によって変わるから、この玉の姿だって一時的なものにすぎない。全部、『真統記』を不正に利用されないための対策ね。それはそれは探したわよ。でも、それもやっと報われるの」
「巫山戯ないで。異界とこちらを繋ぐ門。それを開けば何が起こるか分からないのよ。災害に繋がるかもしれない。貴方の身勝手な目的に他人を巻き込まないで」
「そうね。貴方はそのために動いてきた。はじめが鍵であることに気付き、客士の一員として迎え入れ、自分の保護化に置くことて"悪い虫がつかないようにした"。そうでしょう?」
「俺は反対したけどな」
 天野はぼそっと呟く。
「お疲れ様、でも貴方の努力も徒労に終わったわね」
「世の中そんなもんでしょう。十撒いた種の内の一つ、二つ芽が出れば御の字。少しくらい上手くいかないからって挫けない。ねえ、何か間違ってるかしら、"結ちゃん"?」
 たまきの顔から笑顔が消えた。立っていた高舞台を降りて望月達に向かってゆっくりと歩き始めた。
「何を言っているのか分からないけれど、貴方達がどうしても邪魔をするというのなら遊んであげましょう」
「来るわよ」
「分かってる」
 天野は"フミツカミ"で瞬時に斧を取り出す。
「うらっ!」

 広場の中心、そこでたまきは二人を待ち構えていた。少女はブラウスの裾を持ち上げてゆっくりとお辞儀をした。望月は銃口をたまきに向ける。
「太君はどこ?」
「望月、嬢ちゃんの後ろに」
 天野に言われて、望月は奥の方を見やった。高舞台の前、見慣れぬ字で描かれた陣の中心には太が仰向けに倒れていた。陣は蒼い光を放っており、周りを薄く照らしている。
「太君!」
「大丈夫よ、祭宮さん。貴方も知ってるでしょう? 儀式は生贄を捧げるものじゃなくて、あくまで『真統記』の中身を開き、その力を引き出すもの。はじめには何も害はない。門を開け終わったら大人しく返してあげるから、そこでお行儀よくしていて頂戴」
「門って、一体、何をするつもり」
「決まってるじゃない。異界に行ってしまった私の同胞をこの地に呼び戻すの」
「異界ですって!? 貴方、何をするつもりか分かってるの?」
「勿論よ。人ならざる者の住む世界、打ち捨てられた神の住む世界。そこに、私のいなくなった同胞がいるの。だから呼び戻すのよ、これを使って」
 たまきは首から下げていたペンダントの、雫のような玉を手に取って見せた。
「……それが、『真統記』というわけね?」
「そうよ。名前だけ聞くと本か、巻物の形を想像するでしょうけど、それは大きな間違い。『真統記』は言わば巨大な図書館。そして、これはそれにアクセスするための端末。でも端末は時代によって変わるから、この玉の姿だって一時的なものにすぎない。全部、『真統記』を不正に利用されないための対策ね。それはそれは探したわよ。でも、それもやっと報われるの」
「巫山戯ないで。異界とこちらを繋ぐ門。それを開けば何が起こるか分からないのよ。災害に繋がるかもしれない。貴方の身勝手な目的に他人を巻き込まないで」
「そうね。貴方はそのために動いてきた。はじめが鍵であることに気付き、客士の一員として迎え入れ、自分の保護化に置くことて"悪い虫がつかないようにした"。そうでしょう?」
「俺は反対したけどな」
 天野はぼそっと呟く。
「お疲れ様、でも貴方の努力も徒労に終わったわね」
「世の中そんなもんでしょう。十撒いた種の内の一つ、二つ芽が出れば御の字。少しくらい上手くいかないからって挫けない。ねえ、何か間違ってるかしら、"結ちゃん"?」
 たまきの顔から笑顔が消えた。立っていた高舞台を降りて望月達に向かってゆっくりと歩き始めた。
「何を言っているのか分からないけれど、貴方達がどうしても邪魔をするというのなら遊んであげましょう」
「来るわよ」
「分かってる」
 天野は"フミツカミ"で瞬時に斧を取り出す。
「うらっ!」

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