「うーん」
 文芸部の部室。早朝かつ休日のせいか、誰もいないこの部室で太は頭を抱えて唸っていた。
 理由は至極明快なものである。のっぴきならない事情とはいえ、度重なる欠席によってとある講義の出席日数が足りなくなってしまったのだ。幸い、担当教授の計らいによって追加レポートを提出することによってその埋め合わせとすることになったが、その見るからに幼そうな女教授は優しいのか厳しいのか、その分量が甚だしいものであった。『私が飴だけをあげるわけがないだろう。ほれ、不満を言う暇があるならさっさとやり給え』などと嗜虐心をたっぷりに堪えた顔で言った。
「そんなことを言われても、これはちょっと理不尽だよ。やっぱりあの人、当て付けのつもりなんじゃ」
「はじめ」
「え?」
 あり得ない声が響いた。ここにいる筈のない声。太はおそるおそる後ろを振り向く。

「うーん」
 文芸部の部室。早朝かつ休日のせいか、誰もいないこの部室で太は頭を抱えて唸っていた。
 理由は至極明快なものである。のっぴきならない事情とはいえ、度重なる欠席によってとある講義の出席日数が足りなくなってしまったのだ。幸い、担当教授の計らいによって追加レポートを提出することによってその埋め合わせとすることになったが、その見るからに幼そうな女教授は優しいのか厳しいのか、その分量が甚だしいものであった。『私が飴だけをあげるわけがないだろう。ほれ、不満を言う暇があるならさっさとやり給え』などと嗜虐心をたっぷりに堪えた顔で言った。
「そんなことを言われても、これはちょっと理不尽だよ。やっぱりあの人、当て付けのつもりなんじゃ」
「はじめ」
「え?」
 あり得ない声が響いた。ここにいる筈のない声。太はおそるおそる後ろを振り向く。

url(../../img/bg_19.jpg)
p11