「"しんとうきの解読作業の調子はいかが"?」
「え?」
 太はキョトンとする。しんとうき? それは祖父が語っていた書物の名と同じだ。
 何故、今ここでそれの名が? 確かに、事前にこういう展開に持っていくことは知っていた。だが、その本の名前がここで出てくるとは予想だにしなかった。一体、どういうことなのか。
 訳が分からないまま様子を見守っていると、生野が徐ろに両手を上げる。
「よくその名前を知っているとはね。正直、驚いたよ」
「それはお互い様よ。余人には存在すら知られていない筈なのに、一介の名士にすぎない貴方が知っているどころか、あまつさえ所持すらしているのだから」
「巡り合わせというやつだ。なに、昔古い付き合いにあった者から偶然譲り受けたにすぎん。まあ、そのお陰で、最近曲者に悩まされているのだが」
「確かに頭の痛いことね。大鯰をけしかけられたり、市内におかしな爪痕を残してしまったり、心中お察しするわ」
「いやなに、それでもこんな宝物が得られたことを考えれば安いものさ」
「そう。それは何より。それで、もう一度聞くけど、解読は進んでるかしら?」
「ふん、そもそも開くことが出来ないからどうしようもない。だからこそ、"鍵"が必要だ」
「……私達を襲った代償、高くつくわよ」

「"しんとうきの解読作業の調子はいかが"?」
「え?」
 太はキョトンとする。しんとうき? それは祖父が語っていた書物の名と同じだ。
 何故、今ここでそれの名が? 確かに、事前にこういう展開に持っていくことは知っていた。だが、その本の名前がここで出てくるとは予想だにしなかった。一体、どういうことなのか。
 訳が分からないまま様子を見守っていると、生野が徐ろに両手を上げる。
「よくその名前を知っているとはね。正直、驚いたよ」
「それはお互い様よ。余人には存在すら知られていない筈なのに、一介の名士にすぎない貴方が知っているどころか、あまつさえ所持すらしているのだから」
「巡り合わせというやつだ。なに、昔古い付き合いにあった者から偶然譲り受けたにすぎん。まあ、そのお陰で、最近曲者に悩まされているのだが」
「確かに頭の痛いことね。大鯰をけしかけられたり、市内におかしな爪痕を残してしまったり、心中お察しするわ」
「いやなに、それでもこんな宝物が得られたことを考えれば安いものさ」
「そう。それは何より。それで、もう一度聞くけど、解読は進んでるかしら?」
「ふん、そもそも開くことが出来ないからどうしようもない。だからこそ、"鍵"が必要だ」
「……私達を襲った代償、高くつくわよ」

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