「どうした、少しずつ撃つまでの間隔が広がっているようだが、いよいよ弾切れか?」
「さっきも言ったと思うけど、弾切れなんか期待しても無駄よ。まだまだ百発でも二百発でも撃てるわ」
 屋敷の大広間。中央階段の踊り場に刀を持って陣取る生野に望月は二丁の銃口を向けている。それが、望月の基本のスタイルであった。銃は"そういう類"に対して作用する特別性であり、中に実弾は込められていない。中に押し込めるのは魔力、霊力などと呼ばれる力を固めたもので、標的に当たれば跡形もない。いや、そもそも元から形などないのだ。弾丸は形がないものだからこそ、弾を持ち歩く必要もないし、物理的な弾切れなど存在しない。
 彼女がこの二丁拳銃を有事の際の基本スタイルとしたことに対した理由は存在しない。ただ、古来より存在する剣や弓などと違って謂われを持つことのないそれが、一体どこまで霊性を獲得し、実用性に耐えうるのか試してみたかったのだ。そして、結果として彼女はこれを気に入り、今の自分の基本スタイルとするに至った。
 太は別の所に避難させていた。無論、一人になった太が不意打ちを喰らわないように対策を施してはあったが、生野は自分に自信があるのかそんなことをするつもりは毛頭ないようでった。
「くくく」
「あら、私何かおかしいこと言った?」
「いいや。なあ、お嬢さん、そうだとしても無尽蔵ではないだろう」
「さて、何のことかしら」
「しらを切るつもりか。よかろう」
 生野が片手を前に突き出す。それに呼応するかのように望月の両手は引き金をひいた。銃口から放たれたものは生野の眼前に迫るが、生野はそれを叩きおとした。前を見るが、そこに立っている筈の望月がいない。
「何処見てるのかしら」
 生野は天上を見上げる。そこには銃を生野に向けている望月。

「どうした、少しずつ撃つまでの間隔が広がっているようだが、いよいよ弾切れか?」
「さっきも言ったと思うけど、弾切れなんか期待しても無駄よ。まだまだ百発でも二百発でも撃てるわ」
 屋敷の大広間。中央階段の踊り場に刀を持って陣取る生野に望月は二丁の銃口を向けている。太は別の所に避難させていた。無論、一人になった太が不意打ちを喰らわないように対策を施してはあったが、生野は自分に自信があるのかそんなことをするつもりは毛頭ないようでった。
「くくく」
「あら、私何かおかしいこと言った?」
「いいや。なあ、お嬢さん、そうだとしても無尽蔵ではないだろう」
「さて、何のことかしら」
「しらを切るつもりか。よかろう」
 生野が片手を前に突き出す。それに呼応するかのように望月の両手は引き金をひいた。銃口から放たれたものは生野の眼前に迫るが、生野はそれを叩きおとした。前を見るが、そこに立っている筈の望月がいない。
「何処見てるのかしら」
 生野は天上を見上げる。そこには銃を生野に向けている望月。

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