豊前翁はそう言うと、手に持っていた扇を弓納の前に放り投げた。そして徐に両手を上に挙げた。
「これで私は君と戦うことを放棄した。ああ、降参と取ってもらっても構わないよ」
「……よく理解できません。貴方の目的は」
 慎重に芝生の上に転がった扇を拾い上げながら、弓納はとぼけた表情をする男に尋ねる。
「別に、君達と対峙することではない。この前は確かに君達、ま、正確に言うとあの太一という青年が目的だったのだがな。あれから色々あって最早それはどうでもよくなった」
「そうですか」
「ちなみに全部衣服を脱げなどとは言わないでくれよ。私の得物はそれだけだ。本当だよ」
 とぼけたように豊前翁が言うと、弓納は少し頬を染めた。
「そんなこと言いません。ですが、一先ず信じましょう」
「やれやれ」
「仮にもし後ろから襲ってきたら、遠慮せずに叩き潰します」
 そう言って弓納はその場を後にするのを見届けると、豊前翁は肩をすくめる。
「いや、怖いね、それは」

 豊前翁はそう言うと、手に持っていた扇を弓納の前に放り投げた。そして徐に両手を上に挙げた。
「これで私は君と戦うことを放棄した。ああ、降参と取ってもらっても構わないよ」
「……よく理解できません。貴方の目的は」
 慎重に芝生の上に転がった扇を拾い上げながら、弓納はとぼけた表情をする男に尋ねる。
「別に、君達と対峙することではない。この前は確かに君達、ま、正確に言うとあの太一という青年が目的だったのだがな。あれから色々あって最早それはどうでもよくなった」
「そうですか」
「ちなみに全部衣服を脱げなどとは言わないでくれよ。私の得物はそれだけだ。本当だよ」
 とぼけたように豊前翁が言うと、弓納は少し頬を染めた。
「そんなこと言いません。ですが、一先ず信じましょう」
「やれやれ」
「仮にもし後ろから襲ってきたら、遠慮せずに叩き潰します」
 そう言って弓納はその場を後にするのを見届けると、豊前翁は肩をすくめる。
「いや、怖いね、それは」

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