生野は背後を振り向こうとする。しかし、振り返ろうとした矢先に全身に強い衝撃が走り、広間脇の壁に打ち付けられた。
 生野は立ち上がると目の前にいるものを見た。
 そこにいたのはやはり望月である。その手には銃の代わりに大幣が握られていたが、その勝気な表情に見間違いはなかった。しかし、生野は何か違和感を感じた。
 彼女だけではない。望月詠子の体には、"彼女以外の何かがいる"。生野はそう直感した。二重人格なのか、と一瞬考えたが、別の人格が表に出ている気配はない。あくまでそこにいるのは今まで自分が対峙していた望月詠子である。
「私これでも神官なのよ」
 少しずつ距離を詰めてくる望月は言った。そうして、生野は彼女に感じた違和感の正体を悟った。
「神、か」
「察しがいいわね。"神詠(かみよみ)"、つまり神様を降ろしたの。まあ、降ろせる神様限られてるけどね」
「ふ、ふふ。最早遠慮する必要などなしか」
「あら、最初から遠慮する必要なんてないのだけれど」
 望月が大幣を横に薙ごうとする。

 生野は背後を振り向こうとする。しかし、振り返ろうとした矢先に全身に強い衝撃が走り、広間脇の壁に打ち付けられた。
 生野は立ち上がると目の前にいるものを見た。
 そこにいたのはやはり望月である。その手には銃の代わりに大幣が握られていたが、その勝気な表情に見間違いはなかった。しかし、生野は何か違和感を感じた。
 彼女だけではない。望月詠子の体には、"彼女以外の何かがいる"。生野はそう直感した。二重人格なのか、と一瞬考えたが、別の人格が表に出ている気配はない。あくまでそこにいるのは今まで自分が対峙していた望月詠子である。
「私これでも神官なのよ」
 少しずつ距離を詰めてくる望月は言った。そうして、生野は彼女に感じた違和感の正体を悟った。
「神、か」
「察しがいいわね。"神詠(かみよみ)"、つまり神様を降ろしたの。まあ、降ろせる神様限られてるけどね」
「ふ、ふふ。最早遠慮する必要などなしか」
「あら、最初から遠慮する必要なんてないのだけれど」
 望月が大幣を横に薙ごうとする。

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