しかしその動作が終わる前に、鈍く、重い重力を浴びせられたかのような威圧感をあたりが包み込んだ。
「なに、これ!?」
 意表を突かれて一瞬困惑した望月は生野の顔を見る。そして、望月は生野の顔に再び意表を突かれた。
「どうしたの、ゾッとしたような顔をして」
「まさか」
 生野の顔から一滴の汗が滴り落ちる。目をしきりに動かし、それから目を閉じて耳を澄ませる。
「……これは、間違いない。おのれ、厄介極まりないわ」
 恨めしそうに言った後、生野はそのままゆっくりと目を開け、入り口に向かってせかせかと歩を進める。
「待ちなさい。このまま行かせると思って?」
 望月の声に生野は顔を少しだけ傾ける。その静かな眼光は望月を一瞬たじろがせるには十分な鋭さをもっていた。
「お嬢さんよ、これは情けだ。儂も長らく人間として暮らしていた、いやむしろ魍魎として送った生活など取るに足らぬ時間だ。だから人間に情がある。よって今回は見逃そう」
「随分舐められたものね」
 望月は大幣を振おうとする。
「うっ!?」
 全身に悪寒が走る。それに気を取られていた望月はハッとして生野を睨みつけた。
「……貴方の仕業?」
「さて、どうかな。それはそうと君も早くここを出た方がいい。折角助けてやる命をこのまま散らせてはいかに儂とて寝覚めが悪い」
 そうしてそそくさと生野は入り口から出ていった。
「嫌な感じ。でも彼の言う通りね。一先ず、ここから出た方がよさそう」

 しかしその動作が終わる前に、鈍く、重い重力を浴びせられたかのような威圧感をあたりが包み込んだ。
「なに、これ!?」
 意表を突かれて一瞬困惑した望月は生野の顔を見る。そして、望月は生野の顔に再び意表を突かれた。
「どうしたの、ゾッとしたような顔をして」
「まさか」
 生野の顔から一滴の汗が滴り落ちる。目をしきりに動かし、それから目を閉じて耳を澄ませる。
「……これは、間違いない。おのれ、厄介極まりないわ」
 恨めしそうに言った後、生野はそのままゆっくりと目を開け、入り口に向かってせかせかと歩を進める。
「待ちなさい。このまま行かせると思って?」
 望月の声に生野は顔を少しだけ傾ける。その静かな眼光は望月を一瞬たじろがせるには十分な鋭さをもっていた。
「お嬢さんよ、これは情けだ。儂も長らく人間として暮らしていた、いやむしろ魍魎として送った生活など取るに足らぬ時間だ。だから人間に情がある。よって今回は見逃そう」
「随分舐められたものね」
 望月は大幣を振おうとする。
「うっ!?」
 全身に悪寒が走る。それに気を取られていた望月はハッとして生野を睨みつけた。
「……貴方の仕業?」
「さて、どうかな。それはそうと君も早くここを出た方がいい。折角助けてやる命をこのまま散らせてはいかに儂とて寝覚めが悪い」
 そうしてそそくさと生野は入り口から出ていった。
「嫌な感じ。でも彼の言う通りね。一先ず、ここから出た方がよさそう」