「はじめ?」
 突如、聞き覚えのある声がした。その可愛らしい声に太は思わず目を開けた。
「たまき?」
 太は目を丸くして言った。
「ええ、そうよ」
 それに答えてたまきはにっこりと笑う。
「一体、どうしてここに」
「あら、私がここにいてはいけないの?」
「ううん、そんなことはないけど」
「じゃあいてもいいのね」
 そう言ってたまきは太の隣に座る。
「ああ、そうだ。丁度よかった。そこにあるクロワッサン要らない?」
 太は横に置いていた紙袋を指し示す。
「ヤケ買いじゃないけど、一杯買っちゃて」
「いいの? 嬉しい」
 たまきは心底嬉しそうな笑みを浮かべた。
「そんなにクロワッサンが好きなの?」
「ええ、とっても」
「よかった。ほら、お食べ」
「はじめ、私は犬じゃないわよ」
「ああ、ごめんつい」
 ばつが悪そうに俯く太を見てくすりとたまきは笑う。
「可愛い」
「え、何か言った?」
「いいえ、何も」
 たまきは素知らぬふりでクロワッサンを頬張る。ちまちまと食べる様子はまるで小動物のようである。
「美味しい?」
「ええ、とっても」
「そう、よかった」
「はじめは食べないの?」
「いいよ、さっき食べたから」
「そうなのね」
 クロワッサンを食べ終えた小さな手でごちそうさまでした、と手を合わせる。
「ありがとう。本当に美味しかったわ」
 少女は無邪気に笑う。その様子を見て太もつられて笑ってしまった。
「ねえ、はじめ」
「うん、何?」
「今日は予定は空いているかしら?」
「見ての通り、今日は何もすることがないよ」
 太は苦笑する。予定が空いているということが後ろめたいことのように感じるのはどうしてだろうか?
「そうなのね。それなら、今日一日付き合ってもらえないかしら?」
「え」
「はじめと色々な所に行ってみたい。駄目?」
 たまきが下から顔を覗き込むと、太は思わず目をそらしてしまった。
「いや、いい、けど」
 目をきょろきょろさせながら太は言った。
「じゃあ決まりね。行きましょう!」
「はいはい」
 たまきの差しだした手を太は握った。

「はじめ?」
 突如、聞き覚えのある声がした。その可愛らしい声に太は思わず目を開けた。
「たまき?」
 太は目を丸くして言った。
「ええ、そうよ」
 それに答えてたまきはにっこりと笑う。
「一体、どうしてここに」
「あら、私がここにいてはいけないの?」
「ううん、そんなことはないけど」
「じゃあいてもいいのね」
 そう言ってたまきは太の隣に座る。
「ああ、そうだ。丁度よかった。そこにあるクロワッサン要らない?」
 太は横に置いていた紙袋を指し示す。
「ヤケ買いじゃないけど、一杯買っちゃて」
「いいの? 嬉しい」
 たまきは心底嬉しそうな笑みを浮かべた。
「そんなにクロワッサンが好きなの?」
「ええ、とっても」
「よかった。ほら、お食べ」
「はじめ、私は犬じゃないわよ」
「ああ、ごめんつい」
 ばつが悪そうに俯く太を見てくすりとたまきは笑う。
「可愛い」
「え、何か言った?」
「いいえ、何も」
 たまきは素知らぬふりでクロワッサンを頬張る。ちまちまと食べる様子はまるで小動物のようである。
「美味しい?」
「ええ、とっても」
「そう、よかった」
「はじめは食べないの?」
「いいよ、さっき食べたから」
「そうなのね」
 クロワッサンを食べ終えた小さな手でごちそうさまでした、と手を合わせる。
「ありがとう。本当に美味しかったわ」
 少女は無邪気に笑う。その様子を見て太もつられて笑ってしまった。
「ねえ、はじめ」
「うん、何?」
「今日は予定は空いているかしら?」
「見ての通り、今日は何もすることがないよ」
 太は苦笑する。予定が空いているということが後ろめたいことのように感じるのはどうしてだろうか?
「そうなのね。それなら、今日一日付き合ってもらえないかしら?」
「え」
「はじめと色々な所に行ってみたい。駄目?」
 たまきが下から顔を覗き込むと、太は思わず目をそらしてしまった。
「いや、いい、けど」
 目をきょろきょろさせながら太は言った。
「じゃあ決まりね。行きましょう!」
「はいはい」
 たまきの差しだした手を太は握った。

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