「はじめ、貴方は私と同じ。人間であって、人間ではない」
 たまきは淡々とそう言った。
「……え?」
 太は我が耳を疑った。寝耳に水を打たれたような気分だと彼は思った。人間であって、人間ではない。その言葉は矛盾している。
「たまき。君の言っている意味が分からない。君は僕の何を知ってるっていうんだ」
「貴方が何者なのかを知っているわ。貴方は、太の家系に連なる者。それがどういう意味か分かるかしら?」
「それくらい」
 知っている、と言おうとしたが、寸前で出かかった言葉を止めて目を伏せながら首を横に振った。今は没落して見る影もないが、遥か昔、自分の家系はそれなりに由緒ある家だったということは祖父から聞かされていた。しかし、だからどうだというのだ。所詮は塵に消えた栄華だと気にもかけず、それ以上のことを自分は知らなかった。
「太の家系に連なるから、どうしたっていうのさ」
「太の家系は、ある書物を代々守り続ける。そのことは秘匿され、知っている者は一握りの者達のみ。数十億ページあるとも言われるその書物は大きく"外篇"と"内篇"に分かれ、外篇については誰もが閲覧可能だけれど、内篇はある者にしか開くことを許されていない。では何故内篇を開ける者は限られているのか? 何故なら、その書物は今となっては信じられないような奇跡を起こす神代の秘術が記載されているから。そうね、例えば、黄泉がえりとか。だから、そんな代物を迂闊に使わせないようにするために、彼らは絶対に解けない封をその書物に施した。そして有事の際、あるいは定期的な内容の更新のためにその封を解くことの出来る子を用意するようにした。はじめ、つまりそれが貴方よ」
「……本の名前は」

「はじめ、貴方は私と同じ。人間であって、人間ではない」
 たまきは淡々とそう言った。
「……え?」
 太は我が耳を疑った。寝耳に水を打たれたような気分だと彼は思った。人間であって、人間ではない。その言葉は矛盾している。
「たまき。君の言っている意味が分からない。君は僕の何を知ってるっていうんだ」
「貴方が何者なのかを知っているわ。貴方は、太の家系に連なる者。それがどういう意味か分かるかしら?」
「それくらい」
 知っている、と言おうとしたが、寸前で出かかった言葉を止めて目を伏せながら首を横に振った。今は没落して見る影もないが、遥か昔、自分の家系はそれなりに由緒ある家だったということは祖父から聞かされていた。しかし、だからどうだというのだ。所詮は塵に消えた栄華だと気にもかけず、それ以上のことを自分は知らなかった。
「太の家系に連なるから、どうしたっていうのさ」
「太の家系は、ある書物を代々守り続ける。そのことは秘匿され、知っている者は一握りの者達のみ。数十億ページあるとも言われるその書物は大きく"外篇"と"内篇"に分かれ、外篇については誰もが閲覧可能だけれど、内篇はある者にしか開くことを許されていない。では何故内篇を開ける者は限られているのか? 何故なら、その書物は今となっては信じられないような奇跡を起こす神代の秘術が記載されているから。そうね、例えば、黄泉がえりとか。だから、そんな代物を迂闊に使わせないようにするために、彼らは絶対に解けない封をその書物に施した。そして有事の際、あるいは定期的な内容の更新のためにその封を解くことの出来る子を用意するようにした。はじめ、つまりそれが貴方よ」
「……本の名前は」

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