異界手帖 十三章:帰る場所

「はじめ、はじめ。何処へ行くの?」
 部室から何故か付いてきたたまきが太に行った。
「北宮神社だけど、それがどうかした?」
「うーん、そうね」
 たまきは少し思案した後、ニッコリと悪戯な笑みを浮かべる。
「私も付いていこうかな」
「え、坂上さんは?」
 思わず太が尋ねると、たまきは苦笑する。
「私も坂上よ」
「あ、そうだった。ごめん」
「もう、おかしな人ね。でも大丈夫よ。お父さんはもう少しお仕事に時間がかかるから。それまでに戻れば、ほら、何の問題も起きなくってよ」
「ははは」
 太は顔をひきつらせながら、こういう子が将来人を手玉に取っていくのだろうか、などと思った。
 伝統的な建築物が立ち並ぶ閑静な住宅街を抜ける。海の見える高台の通りを歩くと、横に鳥居が見えてきた。
「そういえば」
 たまきが呟いた。
「どうしたの?」
「この間はじめに紹介してもらったパン屋さん。美味しかったわ」
「ああ、あそこか」
「うん、よかった。帰りに寄ろうかしら」