プロローグ 第三章:誘い

―― 旧波見小学校校門前

太(思ったよりいい所だ。景色もいいし、このままにしておくのは些かもったいない)
太(ふむ、こんなに良さそうな建物なのに再活用の話がないのは、やっぱり)
太「…………」
中ってどうなってんだろー、などと呟きながら太はふと校舎のほうに目をみやる。
太「あ!?」

見間違えじゃない、太は確信する。誰か建物の中にいる。管理者? それとも、警備の人?
太「っていうか、明かりどころか懐中電灯すらつけてないんですけど」
あの人影の正体がもし人でなかったとしたら。
太「さて、どうしたものか」
多少はそういう知識は心得ているから、仮にそういうものだったとしても、少なくとも自分の身を守るくらいは出来る筈……

ニャア。

唐突な鳴き声に咄嗟に太一は振り向く。
太「なんだ、猫か。どうしたんだこんな所で」
太が猫の前にかがもうとした時である。
太「うわっ!」
突如猫は駆け出し、太の横をすり抜けてしまった。
太「ビックリした……あれ?」
太は懐を探る。
太「ない! 爺ちゃんからもらったお守り」

ニャア。

猫がこれ見よがしに振り返る。
太「お前の仕業か。こら待て!」