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豊前翁は扇を広げて素早く振るう。そうすると、その動きに合わせるかのように風の塊が鈍い音を立てて弓納と豊前翁の間にある地面を抉り取った。 「というわけだ」 豊前翁は扇で口元を隠しながら言った。 「なるほど、恐ろしい扇です。日常ではとても使えたものではありませんね」 「はん、少しはたじろぐかと思ったのだけどなあ。やれやれ、これでは脅かし甲斐がない。君は今をときめく女子高生ではなかったか?」 「すみません。少し慣れてしまっているもので」 「では意地でも驚かせてみたくなった」
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